熱交換器のスケールとは?原因・影響と対策

「熱交換器の出口温度が安定しない」「以前より運転時間が延びた」「開放点検で白色や褐色の付着物が見つかった」このような変化があっても、原因をスケールと断定することはできません。外気や生産負荷、流量、ストレーナーの詰まりなど、同じような変化を生む条件があるためです。そこで、運転データ、付着物の成分、機器の材質を順に見ていくと、設備を傷めず、停止時間にも配慮した方法を選びやすくなります。

この記事でわかること
  • 熱交換器にスケールが付着する原因
  • 温度・流量・圧力と開放点検で確認したい兆候
  • 機械洗浄と薬品洗浄の選び方
  • スケールの付着を抑えるための考え方

熱交換器のスケール対策とは

熱交換器のスケール対策には、固着したものの除去と、付着しにくい状態を保つ予防の2パターンがあります。

除去においては、付着物の成分、厚さ、機器の材質、分解の可否が手段を選ぶ手掛かりになります。

予防としては、補給水や循環水の状態、温度、流れ、運転時間の変化を追うことが大切です。

設備の形式と水系統を把握せずに方法を決めると、伝熱面やガスケットを傷めるおそれがあります。まず「何が、どこに、どの程度付いているか」を把握し、除去と再付着予防を一つの保全計画にまとめましょう。

熱交換器に付着するスケールとは

スケールは、水に含まれる無機成分が析出し、伝熱面や流路に付着・堆積したものです。カルシウム系、マグネシウム系、シリカ系などがあり、成分や結晶の状態によって硬さや薬品への反応が異なります。見た目が似ていても、泥状のスラッジ、腐食生成物、微生物由来のスライムでは対処方法が変わるため、色や手触りだけでは断定できません。

水質分析に加え、必要に応じて付着物そのものを調べると、洗浄方法を絞り込みやすくなります。また、採取位置も記録しましょう。入口側、出口側、流れが弱い場所など、付着の分布は原因を考えるヒントになります

冷却塔と熱交換器では見る場所が異なる

冷却塔は冷却水から熱を放出する設備、熱交換器は温度の異なる流体の間で熱を移す設備です。熱交換器では、伝熱面の汚れ、流路の狭まり、入口と出口の温度、流量や圧力差の推移が主な点検対象になります。冷却塔を使わない給湯設備や製造設備も、スケールの付着を点検したい対象です。

一方、冷却塔を含む循環水系では、蒸発に伴う成分の濃縮や補給水、ブローが熱交換器側の付着にも関わる条件です。同じ水がどの経路を循環しているかを配管図で追ってください。

熱交換器にスケールが付着する要因

水に含まれる成分に加えて、温度が変わる場所、成分が濃縮する水系、流れが弱くなる箇所、運転と停止を繰り返す条件なども、スケールの付着に関わります。条件が重なると、析出した成分が伝熱面に残りやすくなります。同じ機器でも、補給水の水源、生産量、設定温度、運転時間が変われば、付着のしかたは変わるものです。調査は、現在の水質データを調べ、付着が増えた時期と運転条件の変更時期を照らし合わせて確認しましょう。設備側と水側を分けずに見ることで、再発予防につながる条件が見えてきます。

水に含まれる成分と温度の影響

カルシウム、マグネシウム、シリカなどは、条件によって水中から析出し、スケールの構成成分になります。温度やpH、ほかの成分との組み合わせによって析出しやすさが変わるため、「硬度が高いから」「高温だから」と一つの数値だけで原因を決めることはできません。原水と循環水の硬度、シリカ、pHなどを同じ時期に測り、温度条件と照合することが大切です

付着物の成分がわかれば、酸に反応しやすいものか、別の方法が必要なものかを判断する材料になります。機器の材質によって使える薬品も異なるため、成分分析は洗浄剤を選ぶ前に行います。

濃縮・流速・滞留の影響

冷却塔のように水の蒸発と補給を伴う循環系では、水が蒸発する一方、溶けている成分は系内に残ります。補給と排出の管理が合っていないと濃度が上がり、析出しやすい条件へ近づきます。また、流速が低い場所や水が滞留する場所は、析出物が表面にとどまりやすい箇所です。

プレート式熱交換器と多管式熱交換器では、流路の形や開放・清掃の方法が異なります。機器名だけで判断せず、どちら側にどの流体が通るか、流量が設計条件から外れていないか、停止中に水が残る箇所がないかを確かめましょう。運転条件を変更した時期と付着量の記録を並べると、対策後に何を追うべきかも明確になります。

スケールの兆候と設備への影響

白い付着物に加え、入口・出口温度、流量、圧力差、運転時間、消費エネルギーなどの推移もスケールの兆候になります。ただし、一つの値が変わっただけでは、熱交換器内の付着が原因とは断定できません。スケール以外の原因を切り分けるため、外気温、生産負荷、ポンプの状態、バルブ開度、ストレーナーや配管の汚れを同じ時点で確かめましょう。平常時の値を残しておけば、変化が始まった時期を捉えやすくなり、計画停止に合わせた点検や洗浄へつなげられます。同じ条件で比較できる記録があれば、変化を早く捉えられます。

温度差と消費エネルギーの変化

入口と出口の温度は、熱交換の状態を見る基本データです。同じ流量と負荷で運転しているのに所要温度へ達するまでの時間が延びた場合、伝熱面の汚れを疑う材料になります。伝熱面に付着した層は熱の移動を妨げる抵抗となり、必要な加熱量・冷却量を確保しにくくなります。

ただし、前年同月との単純比較では、生産量や外気条件の差が混ざります。負荷、流量、設定温度が近い期間を選び、運転時間や電力使用量の変化を確認しましょう。過去の洗浄前後データがあれば、設備固有の変化幅を知る有力な材料になります。

流量・圧力・開放点検で見える変化

流路に付着物が堆積すると、有効な断面が狭くなり、流量や圧力差に変化が出ることがあります。

流量が下がったときは、ストレーナー、配管、ポンプ、バルブも順に切り分けます。開放できる機器では、付着量と分布を同じ位置・距離で撮影します。写真、運転データ、水質データを同じ日付で管理すれば、原因と対策の関係を追いやすくなります。

放置すると停止や保全費用につながる

伝熱面で熱が移りにくくなり、流路も狭まると、必要な温度や流量を保つために運転条件を上げざるを得ない場合があります。能力低下を補う運転が続けば、洗浄の緊急度が高まり、計画外の停止へつながる可能性もあります。ただし、故障やエネルギー増加の程度は、付着量や設備条件によって異なるため、実測値で判断しましょう。

保全費用には、洗浄作業に加え、分解・再組立て、ガスケット交換、薬品の中和や廃液処理、停止時間、再び付着するまでの期間を含めます。これらを含めると、トータルコストの差がわかります。除去費用が低くても短期間で再発するなら、水系全体の管理を見直す余地があります。

熱交換器のスケールを除去する方法と選び方

すでに付着したスケールの除去には、分解して物理的に取り除く方法と、薬品を循環させて溶解・剥離させる方法があります。付着物の成分と厚さ、伝熱面や配管の材質、機器を開放できるか、確保できる停止時間が選定条件です。洗浄の強さだけを基準にすると、金属表面、プレート、ガスケットを傷めるおそれがあります。作業前に、機器メーカーの保守条件、使用できる薬品、作業時の安全、洗浄後のすすぎと復旧確認まで実施作業に含まれる範囲をそろえましょう。

機械洗浄と薬品洗浄

機械洗浄には、機器を開放してブラシや高圧水などで付着物を取り除く方法があります。付着の分布を目視しやすい一方、狭い流路や複雑な形状では届かない場所があり、工具や水圧による損傷にも注意が必要です。分解できるプレート式熱交換器では、プレートの変形、表面の傷、ガスケットの劣化の有無を見ながら進めます。

薬品洗浄は、付着物と反応する洗浄液を機器内に循環させる方法です。スケールの成分に合う薬品でなければ十分に反応せず、材質に合わなければ腐食やシール部の劣化を招きます。濃度、温度、循環時間、排液の中和・処理、作業者の安全対策を事前に決め、実施条件は専門業者や機器メーカーと詰めてください。

洗浄後の再付着を防ぐ水処理

洗浄で伝熱面がきれいになっても、付着を生んだ条件が同じなら再発するおそれがあります。補給水と循環水の管理値、ブロー条件、薬剤の使用状況、流量、停止中の滞留が見直す項目です。設備形式、水系統、配管径、流量、設置位置への適用可否は、水処理装置を選ぶ前に調べてみましょう。

対策前後で比較する項目には、温度、流量、圧力差、水質、開放時の付着量などがあります。現場で継続できるものに絞り、同じ条件で記録します。洗浄直後の値を基準として残せば、再付着の兆候を早めに捉えやすくなります。

エミールを活用したスケール対策

産業用水処理システム「エミール」は、熱交換器や冷却水配管へのスケール付着を抑えることができます。薬品で既存の付着物を一度に溶かす洗浄剤ではないため、厚く固着したスケールがある設備では、洗浄の要否と導入の順番を個別に決めます。エミールは、水に含まれる成分を除去せず、設備内の水流を利用して水処理を行います。既存設備の形式、開放式・密閉式の違い、配管構成と流量を把握し、導入後に何を比較するかまで決めることが欠かせません。エミールの設置方法は、同じ水が循環する範囲を見たうえで決まります。

熱交換器・冷却水配管への設置を検討する

エミールはステンレス本体にセラミックスを充填し、電源を使わず、水の流れで水処理を行う仕組みです。処理した水が付着物に浸透してスケールの構造を脆化・軟化させることで、水流による剥離につながります

産業用水処理システム「エミール」の仕組みでは、セラミックスの構成とスケールへの作用を詳しくご案内しています。

開放式の冷却塔では循環配管の還り側、密閉式では散水ポンプの吐出側が設置位置の基本例ですが、実際の位置は配管図と流量を照らし合わせて決めます。熱交換器だけに適用したい場合も、対象となる流体、水系統、バイパスの有無、必要流量を確認してください。

食品工場のプレート式熱交換器で見られた変化

食品工場の事例では、プレート式熱交換器を開放するたび、付着したスケールが大量に落下していました。エミール設置後は、プレート開放時に落下するスケールがほとんど見られなくなり、スケールの付着が抑えられていることがわかりました。この結果はすべての設備へ同じように当てはまる保証ではありませんが、開放点検で付着量を継続比較する方法が、導入効果を見極める一例になります。

事例と自社設備を比べるときは、流体、温度、流量、水系統、設置前の付着状況、開放点検の間隔をそろえて確認しましょう。導入前の写真と付着量を残せば、導入前後の変化を比較できます。

食品工場を含む実例は、クーリングタワーへの効果に掲載しています。

設備情報をそろえ、除去と再付着予防を一緒に検討する

熱交換器のスケール対策を決めるには、現在の付着物に加え、設備がどの条件で動いてきたかも把握する必要があります。熱交換器の形式、対象流体、流量、入口・出口温度、配管図、補給水と循環水のデータ、既存の薬剤や水処理方法、洗浄履歴をそろえてください。スケールの写真や分析結果もあれば、除去方法と再付着予防の順番を検討しやすくなります。相談前の資料は完璧でなくても構いません。わかる範囲を時系列でまとめ、温度を戻したい、開放清掃の回数を減らしたいなど、改善したい指標を定めることが相談に向けたスタートラインです。

熱交換器の状態と水処理条件を同じ資料で照合する

洗浄を先に行うのか、水処理の見直しと同時に進めるのかは、付着量、停止可能な時期、安全性によって変わります。厚いスケールで流量や伝熱性能への影響が大きい場合は、安全に除去できる方法の選択が先です。その後は、温度、流量、圧力差、水質、開放点検の写真を同じ条件で記録し、再付着の兆候を追いましょう。

エミールの適用範囲、設置位置、導入前後に比較する項目は、熱交換器の形式と配管条件によって異なります。再付着を抑えたい方は、お問い合わせフォームからご相談ください。

監修者

立石氏のイラスト

エミール・ジャパン(株) 九州支店

常務取締役 技術本部長 立石

冷却塔の運用は、効率と安全の両立が重要です。
現場の課題を踏まえ、一般的な管理とエミールでの管理の両方の視点で本記事を監修しました。
持続可能な運転を実現する一助となれば幸いです。