冷却塔の薬剤を減らしたい方へ|薬注管理の課題と「水のチカラ」を活かす選択肢

この記事でわかること
  • 冷却塔で薬剤が必要とされてきた背景と仕組み
  • 薬注装置の運用で現場が抱えやすい課題
  • 固形タイプや電気分解方式など、薬剤削減の選択肢と注意点
  • 薬剤に頼り続けない運用を考えるときの視点
  • エミールの仕組みと冷却塔への導入イメージ

冷却塔の薬注管理に、こんな悩みを感じている方はいないでしょうか。

「薬剤の補充や濃度調整に手間がかかる」

「ランニングコストが毎年重くのしかかる」

「担当者が変わるたびに管理水準がばらつく」

薬注装置は設備トラブルを防ぐために普及してきましたが、導入して終わりではなく、日常的な管理負担がつきまといます。この記事では、薬注装置の仕組みと課題を解説し、薬剤への依存度を下げるための選択肢として「エミール」を紹介します。

冷却塔の水質管理に薬剤が使われ続けてきた理由

冷却塔は、水を蒸発させることで熱を逃がす仕組みを持つ設備です。工場やビルの空調・製造設備において広く使われており、長時間にわたって運転し続けることが前提となっています。ところが、この「水を蒸発させる」という仕組みそのものが、水質トラブルの温床になりやすい環境をつくります

蒸発によって水が減っていく一方で、水に溶け込んでいたミネラルや不純物はそのまま残るため、循環水の中で濃縮が進みやすくなります。この濃縮が続くと、スケール(水垢)の付着や腐食、微生物の繁殖といったトラブルにつながります。

こうした問題を予防するための手段として、薬注装置による薬剤投入が広く採用されてきました。

冷却塔で起きやすいトラブルの種類

冷却塔の運転を続けるなかで発生しやすいトラブルには、主に以下の種類があります。

  • スケール: ミネラル分が結晶化して配管や熱交換器に付着し、熱効率を下げる原因になります。
  • 腐食: 水中の酸素や不純物が金属部品に作用し、設備の寿命を縮めるリスクがあります。
  • スライム: 微生物や藻が繁殖し、配管内に膜状に付着します。放置すると閉塞や異臭の原因にもなります。
  • レジオネラ属菌: 冷却塔のようにエアロゾルが発生しやすい設備では、衛生管理上の重要な対象です。

これらのトラブルは設備の性能低下や修繕コストの増加に直結するため、冷却塔の維持管理において水質管理は欠かせない課題です。

薬注装置の基本的な仕組み

薬注装置は、冷却塔の循環水に薬剤を定量的に投入するための装置です。薬剤タンク、薬注ポンプ、制御盤、センサーなどで構成されており、薬剤の濃度を一定に保つことで循環水の水質をコントロールし、スケールや腐食を予防する考え方に基づいています。

制御方式にはいくつかの種類があり、タイマーで一定間隔に投入するタイプ、流量に比例して投入量を調整するタイプ、導電率センサーで水質を測定しながら自動調整するタイプなどが選ばれています。

一方、導電率センサーを用いた制御は、循環水の濃縮状態を指標に排水(ブロー)管理や薬注管理を自動化しやすい方式です。ただし、導電率は水質のひとつの目安であり、設定値やセンサー保守が適切でないと、期待どおりの管理につながらない場合があります。

薬注装置については、以下の記事でより詳しく解説しています。

冷却塔の薬注装置とは?水質管理で設備トラブルを防ぐための基本ガイド

薬注装置の運用で現場が抱えやすい課題

薬注装置は設置して終わりではありません。薬剤の補充や濃度確認、装置の稼働チェックなど、日常的な作業が発生し続けるうえに、水質や運転条件の変動に応じた細かい調整も必要になります。専門知識と継続的な対応力が求められる管理業務になりやすい点が課題です。

ランニングコストが増えやすい構造

薬注装置の運用では、薬剤の購入費用が継続的に発生します。加えて、濃縮が進んだ循環水をブローする際の排水処理コスト、薬注ポンプや配管の定期メンテナンスにかかる費用なども積み重なります

また、投入量の調整が適切でない場合には薬剤が過剰になるケースもあり、無駄なコストや排水への影響につながります。「適切な量を維持し続ける」という点に、運用上の難しさがあります。

日常管理とメンテナンスの負担

薬注装置を動かし続けるためには、日々の確認作業が必要です。薬剤タンクの残量チェック、装置の稼働状態の確認、センサーの動作確認など、項目は多岐にわたります。配管の詰まりや機器トラブルが発生した場合には、迅速な対応が求められるため、担当者のスキルと対応力に依存する部分も大きくなります。

設備管理の現場では、担当者の交代や人手不足が管理水準の維持を難しくするケースもあります。引き継ぎがうまくいかなければ管理の精度が下がりやすく、こうした属人化の問題も薬注装置の運用を難しくする一因です。

水質変動への対応が難しい場合

冷却塔の水質は季節や運転条件によって変わります。夏場は蒸発量が増えるため濃縮が進みやすく、より細かいブロー管理が必要になります。補給水(市水など)の水質も地域や季節によって異なるため、最適な薬剤量は一定ではありません。

こうした変動に対応するためには、継続的なデータの蓄積と判断が必要であり、水質管理の負担が大きくなりやすいです。さらに、水質をしっかり管理していてもスケール障害が収まらないケースがあります。古い設備では自動制御や遠隔監視の機能が限られており、人手による対応に頼らざるを得ない状況が続くことも少なくありません。こうした場合、薬剤の投入量を増やすだけでは根本的な解決にならないことがあるのです。

薬剤を減らす方法として検討される選択肢

薬注装置の運用に課題を感じている現場では、「薬剤の使用量を減らしたい」「できれば薬注装置に頼りすぎない運用をしたい」という要望が出てきます。選択肢としては、濃縮ブロー排水の増量、固形タイプの薬剤、電気分解を利用した製品、物理的な処理方式などがあります。それぞれにメリットと注意点があり、現場の設備や水質の条件に合わせた選び方が求められます。

固形タイプの薬剤と濃度管理の難しさ

固形タイプの薬剤には、錠剤型や、専用の溶解・注入装置と組み合わせて使うタイプがあります。液体薬剤に比べて輸送・保管性や取り扱いやすさにメリットがある一方、製品ごとに供給方法や濃度管理の考え方が異なるため、導入時は仕様と管理方法の確認が必要です。

電気分解方式の特徴と導入条件

薬剤を使わない、または使用量を抑える方向性の選択肢として、電気分解や電解式の水処理を採用する製品もあります。製品によって狙う効果や適用条件は異なるため、「どの現場でも同じように使える」とは限りません。

一方で、電源の確保が必要なこと、設備の規模や設置条件によって導入の可否が分かれること、初期コストや電気代を含めたトータルコストでの比較が必要なことなど、検討すべき項目があります。導入前に現場条件を詳しく確認することが重要です。

方式特徴注意点
液体薬注制御性が高く普及している日常管理・補充が継続して必要
固形薬剤ポンプ不要で導入しやすい濃度が安定しにくい場合がある
電気分解方式薬剤使用量を抑える製品がある電源・設置条件・仕様確認が必要
物理的処理(エミールなど)薬剤タンクやポンプを使わない構成がある現場条件に合わせた検討が必要

衛生管理やレジオネラ対策と薬剤削減の両立

冷却塔の管理において、薬剤を減らす取り組みを進める際に見落とせないのが衛生管理の観点です。薬剤を減らすことで運用コストや手間が軽減される一方で、レジオネラ属菌への対応など、衛生リスクの管理は引き続き必要になります。「薬剤をゼロにすれば管理が不要になる」ということではなく、管理の方法が変わるという理解が重要です。

レジオネラ属菌への対応で押さえておきたいこと

厚生労働省の指針では、レジオネラ属菌は空気調和設備の冷却塔などの水を使用する設備に付着する生物膜の中で繁殖し、これらの設備から発生したエアロゾルを吸入することで感染することが知られています。そのため、冷却塔ではエアロゾルの飛散抑制と、生物膜・微生物の繁殖抑制の両方が重要になります。

冷却塔内では、冷却水が熱を放出してその一部が蒸発するため、塩類が濃縮されたスケールが生じやすく、微生物が付着しやすい環境になります。薬剤を削減する場合でも、必要に応じた殺菌剤の使用や定期清掃との組み合わせが前提になるのです。

法令やガイドラインに沿った管理の基本

厚生労働省の「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」では、冷却塔の使用開始時および使用期間中は1か月に1回以上、冷却塔と冷却水の汚れの状況を点検し、必要に応じて清掃や換水を行うこと、さらに1年に1回以上は清掃と完全換水を行うことが示されています。必要に応じて殺菌剤等を冷却水に加え、微生物や藻類の繁殖を抑制することも求められています。

また、建築物環境衛生管理の対象となる建築物では、厚生労働省の技術上の基準に基づき、冷却塔の集水槽、散水装置、充てん材、エリミネータ等の汚れや損傷、送風機の作動状況を定期に点検することが求められています。薬剤を削減する方向で運用を見直す場合でも、こうした衛生管理上の要件を外すことはできません。

参考:厚生労働省「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」
参考:厚生労働省「空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」

薬剤に頼りすぎない運用を考えるときのポイント

薬剤管理の見直しを考えるうえで重要なのは、「薬剤をゼロにすること」を目標にするのではなく、「薬剤への依存度を段階的に下げる」という視点を持つことです。現場の設備状況や水質の条件はさまざまであり、現場の実態に合わせた選択肢を検討し、無理のない範囲で見直しを進めることが現実的なアプローチです。

比較のときに見るべきポイント

薬剤削減の方法を比較するときは、単に「薬剤を減らせるか」だけでなく、衛生管理をどう維持するか、日常点検の負担がどこまで減るか、設置条件に合うか、ランニングコストを含めて継続しやすいかという観点で整理することが大切です

また、製品ごとに仕組みや適用条件、期待される効果の示し方は異なります。導入前には、公式資料や実績、現場条件との整合性を確認しながら比較検討するのが現実的です。

エミールの仕組みと冷却塔への導入イメージ

エミールは、水とセラミックスの間に生じる電気二重層の作用で水をカチオン化し、浸透力・洗浄力を向上させる水処理システムです。モンモリロナイト系セラミックスを充填し、水分子同士の水素結合性の変化によってスケールなどに浸透しやすくなります。こうした作用によりスケール付着物の脆化・軟化や剥離を図るのです。

エミール(emiiR)産業用水処理システムの仕組み

エミール導入により冷却塔で期待できること

まずは、冷却塔でのスケール付着抑制です。これにより、熱交換効率の維持が期待できます。

また、ブロー水の大幅な削減が見込めることもポイントです。水道料金のコストダウンにも繋がります。

さらに、薬剤使用量の低減により、排出の環境負荷も軽減。濃縮倍率を上げるために使用する薬剤なども不要な運用を目指すことができます。

ご導入いただく施設の傾向

エミールは、ビルや工場など、冷却塔の薬剤管理に課題を感じている現場で多く導入いただいています。

また、薬剤削減や節水を進めたい施設でも導入いただいています。とくに食品工場などでは、環境配慮やSDGsの取り組みとして、エミールをご採用いただいています。

さらに、設備の長寿命化やランニングコストの最適化を目的に導入いただくケースもあります。冷却塔のスケール対策を見直しながら、維持管理の負担軽減につなげたい現場で、エミールは選ばれています。

詳しい導入事例については、以下ページよりご覧ください。

産業用『エミール』の導入実績

冷却塔の水質管理を見直すことで広がる選択肢

薬注装置の運用に課題を感じたときに、薬剤の種類や量・管理方法を見直すことで、運用負担を軽減できる可能性があります。現場の状況と課題を正確に把握したうえで、自社の施設に合った選択肢を選択しましょう。

薬剤への依存度を抑えながら、スケールや腐食のリスクを管理して設備を維持する運用は、コスト削減と環境配慮の両立という観点でもメリットが大きいです。スケールに薬ではなく、水のチカラを高めて改善するこれからの冷却塔管理の選択肢に、ぜひエミールをご検討ください。

冷却塔の水質管理やコスト削減についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。

監修者

立石氏のイラスト

エミール・ジャパン(株) 九州支店

常務取締役 技術本部長 立石

冷却塔の運用は、効率と安全の両立が重要です。
現場の課題を踏まえ、一般的な管理とエミールでの管理の両方の視点で本記事を監修しました。
持続可能な運転を実現する一助となれば幸いです。